栃木県小水力利用推進協議会設立趣意書
平成23年3月11日に発生した東日本大震災とそれに伴う原子力発電所の事故は、さまざまな形で本県に甚大な被害をもたらしました。その一方、未曽有の震災を契機として、県民の間ではエネルギーに関する問題を身近なものとして捉える傾向が強まり、小水力をはじめとする再生可能エネルギーに対する関心が高まっています。
再生可能エネルギーの中でも水力はエネルギーの利用効率が高く、同じ出力の太陽光発電と比較した場合、4~5倍以上の電力量を得ることが可能です。また、巨大構造物を新たに必要としない小水力発電は地域社会や自然環境との親和性が強く、集落付近での立地が可能なことから、環境教育の面でも大きな役割を果たすことができます。長い間課題とされてきた採算性や事業性については、再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)の施行により大きく改善され、小水力発電による売電収入を地域活性化に生かす取り組みが全国で進んでいます。
本県では、北部を中心に小水力発電の適地が数多く存在し、古くからその利用が進められてきました。その歴史を振り返ると、明治23年に鹿沼市の紡績工場で自家用発電所が運転を開始したのをはじめ、同26年には国産の交流発電機を水力発電で初めて導入した日光電力の発電所(現在の東京電力日光第二発電所)が稼働するなど、本県はわが国の水力発電における先進地域としての役割を担ってきました。世界文化遺産に登録されている「日光の社寺」では、大正3年以来1世紀にわたって自家用の小水力発電所を共同運営しており、得られた電力を山内の施設で利用しています。
FITの施行以降はさまざまな経営主体による開発案件が相次いで浮上し、小水力発電に対する関心の高まりを裏付けています。しかし、民間案件の中には県外事業者が主体となっている事例が見られ、売電によって得られた財貨の県外流出を懸念する声があるのも事実です。地域に存在する水資源を利用する小水力発電では、得られる電力や収入も地域内で活用していく姿勢が必要なのではないでしょうか。また、小水力発電は建設工事や設備の保守などで地元企業の果たす役割が大きく、地域経済の活性化や雇用の創出などが期待できます。
以上のような本県における小水力発電の歴史と現状を踏まえ、住民、行政、企業、 研究機関など県内の幅広い層が連携し、地域のために行う小水力発電を推進する立場から、次の役割を重視した栃木県小水力利用推進協議会を設立いたします。
①栃木県内において、地域のために小水力発電を手掛ける経営主体が円滑に事業を実施できるよう支援する
②住民、企業、官公庁、教育・研究機関など、小水力発電に関心を持つ人々や組織が、情報の交換・共有を図ることができる仕組みを整備する
③小水力発電によって得られる電力や売電収入を活用した、地域活性化や地域の自立に貢献する
④水車や発電機をはじめとする小水力発電関連産業の育成・強化を図り、新たな地域産業とすることを目指す
⑤関係機関と連携しながら、小水力発電の普及・拡大や支援制度の創設・拡充といった施策を働きかける
平成27年6月吉日
栃木県小水力利用推進協議会 呼びかけ人一同
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